公益財団法人 日本吟剣詩舞振興会
Nippon Ginkenshibu Foundation
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吟剣詩舞の海外普及活動 2020年9月

詩吟で国際交流

日本伝統音楽を学ぶ

(英風吟詠会 定国臥浩)

 平成28年2月14日(日)、アイパル香川2階交流フロアにおいて、平成27年度高松市国際交流支援事業の一環として、臥風流英風吟詠会の主催、大森英風少壮吟士が講師を務める「詩吟で国際交流日本伝統音楽を学ぶ」が開催されました。

写真上:語学スクールで英語教師を務めるマシュー•ライトさんの尺八伴奏により、『富士山』を吟じる大森英風少壮吟士
写真下:マシューさんは『富士山』の英訳をしているが、日本語でも見事に詠う


 この事業の主な目的は、一人でも多くの外国人を含む地域の方々に詩吟を体験していただき、認知度を高めるということ。当日のプログラムは以下のように組まれました。

[第一部]
詩吟ワークショップ(詩吟体験)
題材/石川丈山作『富士山』
[第二部]
ミニコンサート
吟詠/大森英風、
尺八独奏/マシュー・ライト

 予定の13時から、ワークショップの題材に取り上げた『富士山』の写真投影から始まり、まず大森英風先生の吟、マシュー・ライトさんの尺八伴奏により、『富士山』の模範吟詠を披露。続いて英国人のマシューさんが、自分で英訳した『富士山』を英語で朗読。次に吟界初の試みとして、大森英風少壮吟士が英語での『富士山』を披露しました。

 そして外国人を交えた五人の方にステージに上がっていただき、ワークショップ(レッスン開始)。発声練習、音階の説明、呼吸法、滑舌練習を終えて、やっと一節ずつを練習し、最後にステージ上の全員で合吟。

 そしてワークショップの締めくくりに、マシューさんによる日本語での『富士山』の独吟。約30人の聴衆の方から、大きな拍手をいただいて、第一部を終了しました。

 次に第二部のミニコンサート。大森先生が「詩吟を初めて聞いていただく方のため、内容、言葉を理解しやすい題材を選曲しました」と説明して、『うさぎと亀』、和歌『ふるさとの』の吟詠二題を披露。

 次にマシューさんによる尺八ソロ演奏で震災振興ソング『花は咲く』。想いのこもった素晴らしい演奏を行い、最後に会場の皆様と『ふるさと』『上を向いて歩こう』の二曲を、マシューさんの尺八の師匠である穴吹壮三先生と岡正敏先生お二人を加えて、楽しく大合唱をして、全メニューを終了しました。

 大森先生によると、今回の企画は次のようにして決まったそうです。

「今回の企画は、高松市国際交流協会の馬場専務理事との談笑の中で生まれました。 色々な話題が波及して、外国人尺八演奏家との吟詠コラボがメインテーマになり、うってつけの人はいないかなと探したところ、マシューさんがいるという情報をキャッチ。お会いしてみるととても素敵な礼儀正しい青年。これはいけるのではと彼の音を聞いてみるとなかなかのもので、トントン拍子に今回の企画が出来上がりました」。

 マシューさんは英国出身の32歳。香川に住んで8年になり、尺八歴3年。色々な楽器をこなす多才で優れた感性を持つ青年です。昨年の9月から本格始動で全10回ほどの練習で『富士山』の伴奏をこなすようになりました。 語学スクールの先生なので会話にも困らず、楽しい練習課程でした。

 私も彼の英訳文を英語で詠うことにチャレンジしましたが、適切なアドバイスを頂き、カタカナ英語ではなく、ある程度きちんと した発音の英語で詠うことができてホッとしています。

 それともう一つ、彼にも「『富士山』を日本語でトライしてみる?」と声をかけたところ、「はい、詠ってみます」と即答。聞いてみるとなん と素晴らしい! 日本人でも難解なはずなのに、なんなく詠ってしまいました。

 詩吟はむずかしいけれど続けたいと彼は言っています。私も少しでも永くお付き合いが続くことを望んでいます。そしてこの企画の継続こそが真の国際交流につながると信じています。


写真:第二部では外国人を含めた参加者も舞台に上がり、詩吟の指導を受ける



アジアの留学生に詩吟•剣詩舞を伝える

「扇」と「剣」の舞いに
日本の心を託して

(北海道中央吟剣詩舞道総連盟)


写真左:扇の振り方で雪や花の振る舞い散るイメージを演じたり、畳めば短刀や筆になったり・・・留学生たちは奥深さに感動した。
写真右:模擬刀を振るう所作を体験する留学生


 北海道恵庭市のハイテクノロジー専門学校で去る2月9日、日本語学科に学ぶアジアの留学生12人が、日本文化研修の一環として詩吟と剣詩舞を実習した。
 同校(塩野寛学校長)では毎年、留学生たちが日本の伝統芸道である詩吟と剣詩舞に接する機会を設けている。今回は台湾8人、中国1人、韓国2人、ニュージーランドの帰国子女1人が参加し、日本国風流詩吟吟舞会恵庭支部の大久保國貢支部長ほか5人の会員が講義と実技を担当した。

 初めに同支部長が画面と資料で、そもそも漢詩と詩吟とは何かから説き起こし、剣詩舞の歴史などを分かり易く解説。留学生たちは初めて学ぶ日本の伝統芸道に、半ば好奇の眼差しを注ぎながらも、時々うなづいては理解を示していた。

 いよいよ実習では、日本の代表的な漢詩「富士山」と「川中島」の意味を教え、その吟と舞を実際に見せた後、詩舞、剣舞それぞれの服装、それに伴う礼の仕方、さらに舞台での立ち居振る舞いなどを説明。実際に扇の持ち方や操り方、剣の抜き方から納め方まで、一人一人に手取り足取り、具体的に実技講習を繰り返した。

 アジアの学生だけに、扇や剣に対する感度は良く、すぐに扇を器用に扱える学生も見られ、講義が進むにつれて興味が深まっていくようだった。剣さばきの実技では、数人の学生が挑戦していたが、中には剣道をたしなむ人もいて、スラリと抜刀してサッと打ち込む早業など、なかなか見事な腕前を見せていた。中国の学生は「竹刀とは違い、抜くところが難しい」と言いつつも、スラリと抜いては楽しんでいる様子。「これが日本人の魂と言われる日本刀ですか……」としみじみ眺め入る姿も見られた。 短時間ではあったが留学生たちは、初めて接する日本の伝統芸道に関心を寄せ、異国留学の真の意義を体得していたようだった。

 道央総連の中島國星広報担当は「この研修は、今年で三回を数え、すっかり定着しました。その都度、地元の新聞でも大きく取り上げられ、広く知られてきました。今後もずっと続けていきたいと思っております」と話している。