公益財団法人 日本吟剣詩舞振興会
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吟剣音楽の基礎知識 2020年4月

〈説明〉

コブシは大きく分けて上回しと下回しがあり、吟詠に不可欠 なのが上回しです。図1のように下がる節のときに用いられ、流麗な印象を醸し出します。 例えば「六→五」と変化するとき「六七六五」と七の方へ回しかけます。同様に「五→'三」の時は「五六五 '三」と動き、「'二→三」の時は「'二五'三三」、「三→二」なら「三'三三二」となるので、図1のように高音部から順に低音部に向かって発声することを繰り返し、繰り返し練習することが肝要です。ここで気をつけなくてはならないこととして……

 「コブシ連続使圧の禁則」というものがあります。例えば「七六五'三」と吟ずる場合に「七八七七八六五'三」と吟ずることはありません。このように吟ずると、短い同じ間の繰り返し、つまり一定のリズムを感じさせてしまい、詩吟とは別の世界に入ってしまいますので、大きな違和感が出てしまいます。このような時は「七六七六五・・・六五'三」のように、一つ置き、あるいは隣接する時に間をやや長めにしてからコブシを入れるようにします。

 日本の伝統的歌唱法には一定のリズムで進行するものの他、「無拍」「拍子不合(ひょうしあわず)」「長物(ながもの)」など、それぞれの畑でいろいろな呼び名がありますが、いずれも詩吟の歌い方と同じように、一定のリズムを持たない歌唱法を指しています。詩吟以外の畑では一定のリズムによる歌い方が主流のため、不定リズムの部分に呼び名が付いているのです。逆に詩吟と同じように不定リズムが主体の琵琶楽などでは一定リズムで 歌う箇所に「流し」などの呼び名が付けられています。

 このように不定リズムで歌う詩吟の場合、間台いが難しく、その善し悪しで吟者の美的センスの程度が評価されます。コブシの使い方もそのうちの一つで、使い方を誤ると吟全体が台無しとなりコブシの役目を果たしません。

 これからコブシを勉強しようという方にはまだ先の話かもしれませんが、コブシが上手になり、コブシが好きになると、これでもかとばかりに、吟を山盛りのコブシでいっぱいにする人がいますが、それではコブシばかりが印象に残り、詩文の内容が聞き手に届きません。

 次に下回しのコブシについて説明します。下回しは、音程が上がる直前と下がった直後に使われます。例えば図2の「乙水乙一・・・」「一乙一二・・・」「'三三'三や図3の「七六六・・・」「六五'三五・・・」「五'三'三・・・」などがありますが、実際には単独で用いられることは少なく「七六七六'三五・・・六五'三'三五'三三・・・」や「水乙・・・一乙一二・・・一二三・・・'三三二三五・・・」など、他の動きと複合的に用いられることが多く、一つのことを習得すれば全てに応用できるというわけにはいきませんので、簡単でないことは確かです。

 最初に戻りますが、詩吟で大切なコブシは上回しですので、まずは図1の練習を繰り返すことから始め、後に他のコブシを練習することをお勧めします。